2018.5.3 導入事例
ドローン活用で輝くスマート農業の未来 有限会社うねめ農場 代表取締役 伊東敏浩
くみき , スマート農業 , 測量 , 生育管理 , いろは , はかせ , 農薬散布 , 導入事例
自分の作業でやりきる達成感とドローンによる作業の効率化を両立し、未来のスマート農業を実現したい
有限会社うねめ農場は福島県の中心部、郡山市に位置し100年以上農業を営われています。古くからの伝統を受け継いできたノウハウと、先端の技術を取り入れる柔軟性を持ち、新鮮で美味しい食材をこれまで多くの家庭に届けています。常に探究される精神で現在では有機循環農法の採用やオリジナル加工品の開発も進められています。本日は伊東社長に、スマート農業の実現化に向けた現場からの視線と、ドローンを導入されて、弊社の農薬散布サービス「はかせ(機体名称X-F1)」、ドローン測量サービス「くみき」や葉色解析サービス「いろは」をご体感いただいたご感想などをうかがった。
写真:X-F1 うねめ農場にて
| 最先端のドローンで若い世代にも定着してほしいこれからの農業
渡邉 本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。まずはドローンを導入しようと思われた理由と現在の課題についてお聞かせください。
伊東 現在農業には様々な問題があります。高齢化による担い手不足、栽培技術の継承など、解決が急がれる課題ばかりです。実際に後継者問題で圃場を管理できなくなる。後継者不足で機械の更新ができなくなることにより就農から離れざるをえない、ということで、私どもへ声をかけてをもらうことも多くあります。
弊社も私が就農した25年前より100町歩増え、現在130町歩の農地を管理しています。従業員は約20名で、20代~40代も6名いますが、中心は60代以上。比較的若いと思われるかもしれませんが、高齢化は私たちも直面している課題です。
話題のスマート農業やloTを活用して若い世代に興味を持ってもらい、将来的に定着してほしいという思いもあり、早い段階からドローン導入を検討していました。20代の従業員はスカイマティクスの農薬散布ドローン「X-F1」のパイロットになって欲しいと思っています。
また、ドローンを活用することにより、直近の作業効率化やコスト削減に繋がると確信しドローン導入を決めましました。
| 農薬散布ドローン「はかせ」により除草剤の散布作業時間を1/4に削減
渡邉 具体的に「はかせ(機体名称:X-F1)」を操縦した感想をお聞かせください。
伊東 今期より「X-F1」で農薬散布を開始しますが、とても安定してフライトします。ドローンは怖い、特に大型機は怖いので飛ばしたくないと言う方もいますが、「X-F1」はラジヘリよりも安定させやすく、機体も大きいため圃場の奥に飛行させても距離感も分かりやすく安心感があり飛ばしやすい機体です。タンクも10L搭載できるので安心です。この機体は防水機能に加え、氷点下や高温など過酷な状況での耐久試験を重ねていると聞いています。圃場は気象条件など毎日同じ日はありません。スカイマティクスさんを信頼しているのは、こういった農家の声に耳を傾けて開発されてきた経緯を知っているからです。
渡邉 ありがとうございます。具体的に期待する効果についてお聞かせください。
伊東 特に除草剤の散布作業における作業時間の短縮と人件費の削減に期待をしています。「X-F1」による空中散布により、1日15町歩(15ha)を散布する計画で、従来の人手による散布に比べて作業時間を1/4にできる見通しです。将来は、雑草や害虫発生場所のみ散布する適所散布や、高濃度タイプの肥料を空中散布する肥料散布もできれば、農薬・肥料のコスト削減にもなり最高だと思います。
渡邉 業界では「自動散布」に対する期待も高いですが、伊東社長も同様に期待されていますか。
伊東 作業としてさらに楽になるものですから発展すると思います。但し、整備された圃場でない限り危険を伴う面もありますから、圃場には必ず人が行くことになると思います。危険を伴う圃場で「自動操縦」をすることは、高価な農機の故障=損失になるリスクも考えなければならないと思います。周囲の状況を理解して安心できる場所で自動操縦をすることにより、さらに作業を楽にする自動操縦に期待したいと思います。
写真:ドローン測量サービス「くみき」で生成した高低差マップ
| 測量サービス「くみき」で圃場の均平調査、すぐ作業に移るスピード感
渡邉 測量サービス「くみき」を導入いただいていますが、採用された理由と現在どのようにご活用されているかお聞かせください。
伊東 圃場を広げる予定があり高低差がある圃場の均平調査をしなければなりませんでした。従来、均平は水を張らない限り分からず、一度水を張ってしまうと1年間手直しができません。この「くみき」を見た時、すぐに均平作業前後の高低差比較に使うことができると思い導入を決めました。
実際にドローンを自動飛行させて撮影し、パソコンにアップロードをしたところ、すぐに高低差データ(DSM)が自動的に生成され、思ったとおり高低差がよくわかりました。実施測量する場合、各ポイントを全て測量する必要があり、手間・時間がかかりますが、「くみき」は全て自動ですごく楽でした。撮影からデータのダウンロードまで短時間でできるので、日を跨ぐこともありません。天候に左右されがちな私たちにとってこのスピード感は嬉しい事です。また初めて「くみき」を触ったとき、操作が簡単なこと、スムーズな動きに驚きました。きっとこだわって作られたのだと思います。PCとドローンを圃場に持っていけば、その場で欲しい情報を欲しい時に簡単に入手できます。簡単な作業なので、今後は毎年データを蓄積して圃場管理にも役立てていきたいと思っています。
渡邉 作業のための時間を邪魔することなくご活用いただいて嬉しく思います。測量サービス「くみき」は農家さんに広がりそうですか。
伊東 はい。興味のある農家さんがたくさんいます。私もSNSなどで発信していると質問もされます。でも皆さんドローンを持っていません。まだまだハードルが高いと思っている方は多いのです。
渡邉 機体のシェアリングなど今後普及すると思われますか。
伊東 そうですね、とても良いと思います。毎日利用するわけではなく時期も限られてるので、シェアの方が入りやすく広がりやすいと思います。農家さんは”機械やPCが苦手”と言いわれがちですが、農業機械は使いこなしています。欲しい効果があれば習得しています。ドローンを使ったサービスも効果があると分かるのは時間の問題だと確信しています。
写真:葉色解析サービス「いろは」のカラー診断画面
| 葉色解析サービス「いろは」を使って、圃場の全体詳細管理と新しい技術継承のかたちを追求
渡邉 葉色解析サービス「いろは」をご体験いただきましたがどんな印象でしょうか。
伊東 私たちにとって圃場見回りはとても大事な作業ですが、外周を回るだけでも時間を要することから1週間に1度ぐらい、周囲から水や葉の状況確認するのが精一杯です。中心部で何が起きているのかは入らなければ分かりません。ただ、病害は1週間程度で圃場全体に広がってしまいます。水や周囲の葉で判断するのは経験者でも難しいですし、経験者が毎度見回りができるわけではありません。
この「いろは」はドローンで圃場全体のスクリーニングをかけることで中心部まで画面一つで知ることができます。「カラー診断」を使い瞬時に葉色状況を確認し、「葉色診断」を使い早期に病害を発見をすることも可能です。これは大幅なリスク回避とコストの削減に繋がります。メッシュで区分けされているので、位置もわかりやすい。従来の「外周管理」から「圃場全体の網羅・詳細管理」に進化できると考えています。
また、熟練の社員と経験の浅い社員では、状況の見極めに差が出てしまいます。「いろは」は「見た目」で状況を区分けでき共有できるため、ロスのない教育や引継ぎができます。病害の目安になるデータを蓄積していくことで、経験の浅い社員でも近似値として判断をすることができます。病害の履歴や肥料や農薬の量などをデータとして蓄積し来年以降の目安とする事も可能です。私たちのように季節労働者や時間労働者が多い場合には、情報を共有できるクラウドサービスというのも魅力的です。
渡邉 「お知らせ」など付属機能を使うことで指示も伝わりやすくなりそうですね。活用例として「いろは」で収穫量予測に役立てられないか検討されている方もいらっしゃいます。
伊東 私たちの「玉ねぎ」などでも応用できそうですね、まだまだ「いろは」の活用方法がありそうです。
渡邉 うねめ農場さんならではの活用方法をぜひ教えてください。「いろは」の操作画面をご覧になっていかがでしたか。
伊東 測量サービス「くみき」とほとんど同じ操作画面でしたので、一目で操作の手順も理解できました。ドローン撮影も「くみき」と同じDJI GS Proを使うので、これは私たちにとって非常に有難い事です。特に高齢の方は「また最初から覚えなければならない」と嫌悪感を持たれてしまう事もあります。私たちでも一から取扱説明書を読むのは面倒な事です。予め「くみき」を経験したことがある社員はスムーズに操作ができると思います。精度はもちろん重要ですが、操作性が同じであることや、高齢者の方やITが苦手な方でも使えるような使い勝手の良さ、というのがもっと重要だと思います。
渡邉 「くみき」と「いろは」は”入口が同じ、目的に合わせて出てくる効果が異なる”というイメージでつくりました。ご評価いただけて嬉しいお言葉です。
| ドローンサービスを相談できる窓口がスカイマティクス一つである安心感、スカイマティクスと共に未来のスマート農業を見たい
渡邉 ITやドローンに対するハードルもユーザーインターフェイスのシンプル化や機体の取扱い、操縦の簡略化などで改善されていくことが多いと感じました。最後に、これから私たちスカイマティクスに期待することを伺えますか。
伊東 スカイマティクスさんとは数年のお付き合いとなりますが、周りを見てみると、農薬散布ドローンはA社、測量はB社、アプリはC社など分かれていることが殆どです。ドローンはとても便利なものですが、私たち就農者にとって、情報収集に手間取ったり時間を取られることや用途毎に操作を覚えることを極力少なくし、作業に専念したいと思っています。その点、スカイマティクスさんは農薬散布サービス「はかせ」、測量サービス「くみき」、葉色解析サービス「いろは」、と提供されているドローンのサービスは多岐に渡りますので、ドローンの利用に関して総合的に相談することができ、私たちと向き合ってくれます。間違いがなかったと確信しています。
渡邉 ありがとうございます。”総合リモートセンシング”を掲げている弊社としてとても嬉しいお言葉です。
伊東 ドローンは現在アシスト機能という位置で私たちの作業を助けてくれています。これからの技術開発で自動化が進むのだと思いますが、全ての作業が自動化されることは自分が作業をやった感がなくなり寂しい。やはり農家として「自分がやりきった」という達成感を感じたい。ドローンには私たちが達成感を得られつつも手間のかかる作業を楽にするアシストをする存在であってほしいと思います。スカイマティクスさんの開発は私たちのこういう想いを理解し、声を一つ一つ聞いて、幅広い知見でより良い解決方法を提案してくれます。農家のためになるサービスを常に考えてくれているので話しやすい。これからもどんどん情報交換をして魅力的なサービスを提供してください。
渡邉 スマート農業の未来の姿を見ながら、今できる技術とのバランスを取り開発を進めています。実際に農家さんにお使いいただくと、私たちが感じていた箇所と異なるところで使い勝手や安全性などご意見をいただいて勉強になることばかりです。これからもうねめ農場さん、農家の皆さんに満足していただけるサービスを提供するべく励んで参ります。本日はありがとうございました。
農薬散布サービス「はかせ」はこちら。
測量サービス「くみき」はこちら。
葉色解析サービス「いろは」はこちら。
福島県郡山市にて100年以上農業、地形・土壌・気候等に合わせ、四季と通じてイチゴや米、キュウリや大豆などおいしい野菜を多くの家庭に届けています。栽培と加工の一貫体制への積極的な取り組み、また、地元「うねめ」ブランド確立など、地元の魅力も日々発信にも従事されている。