茶畑に海岸、公共施設のメンテナンス 牧之原市でドローンが必要になる日が来る
静岡県の中部に位置する牧之原市、基幹作物であるお茶のブランディングや経営体の育成、生産基盤づくりなど「儲かる農業」をキーワードに加速している産業。富士山静岡空港は平成30年10月に旅客ターミナルビルの増築・改修工事の完成が予定されており、交流人口の増加に伴う市内観光事業の活性化が期待されている。マリンスポーツの聖地でもある良質な海岸線を有し、今後国内、インバウンド観光も増加が見込まれる魅力ある「まち」である。
本日は牧之原市のリーダー杉本市長と、「新たな教育・人づくり」の拠点施設として牧之原市にて平成30年4月から運営が開始されたマキノハラボの代表福代氏にドローンに対する可能性や活用法をまちづくり、人づくりの目線からうかがった。
| 杉本市長 : 従来のやりかたにこだわらず、コストダウンや子供達の夢につながる新しい技術を勉強する姿勢を大切にしたい
渡邉 本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。牧之原市の課題解決にドローンはどんなアプローチができるとお考えですか。
杉本市長 牧之原市として、これからドローンの活用を期待している分野の第一は公共施設のメンテナンスです。
公共施設の5割程度は学校施設であり、この施設を利用する人が安全にかつ施設が有効に利用するためにはしっかりと公共施設のメンテナンスが施されていることが重要です。このため、まずは現況を把握し、必要な箇所に補修を行うことを考えたときに、ドローンを活用することで現況把握の部分にかかる時間が圧倒的に少なくなり、かつコストを抑えることができます。適切に補修を施すことで公共施設は市の財産として有効に活用されるわけですから、この維持管理の時間とコストをカットすることができる話はいち早く進めるべきだと考えており、その最初の取り組みとしてスカイマティクスの「くみき」による学校施設のスクリーニングの提案に興味を持っています。
また、公共施設という観点では、橋梁の点検も急務の課題として挙げられます。現在橋梁は5年に1回の点検が義務化されており、全てに足場を組んで人が点検を行うということは費用面において難しいため、ドローンでスクリーニングをかけ、被疑箇所のみ人が点検するという方法をとることが有効だと考えています。また、道路の維持管理などについても、現在どこにどのくらいのクラックがはいっているかについてスクリーニングし、計画的に補修を行っている中、ドローンが代用することによってコストダウンにならないかを検討しています。このように公共施設の維持だけでもドローンを運用することでコストダウンできる可能性は多岐にわたり、効果は「無限大」だと考えています。
ほかにも、牧之原市としてドローンの取り組みにおいて是非やってみたいことは、 2020年から小学生でのプログラミングが必須科目として採用されることが決まっている中、子供達が夢を持って楽しく実際のプログラミングを学んでもらう機会を作る方法を模索しており、その一環として簡単なコードで制御できるドローンを取り入れることなども検討するなど、牧之原市としてドローンをうまく活用することを積極的に検討していきたいと考えています。
福代 例えば、放課後の「子ども食堂」のように子供達の集まる場所で、身近にドローン教室やドローンのプログラミング教室などを開催しても良いと思います。ドローンフライトのメカニズムに触れたり、モノを制御し動かすことができたときの達成感は将来忘れられない記憶となるでしょう。
写真:美しい静波海岸
| 福代:世界に誇るサーフィンの聖地、静波海岸の美しい海岸線を守りたい
渡邉 牧之原市をドローンで撮影しましたが、本当に美しい海岸線ですね。
杉本市長 牧之原市の一番の魅力といえばサーフィン客が集まる良質な波を持つ海です。私の子供の頃は海の家から波打ち際まで熱くて裸足で歩いていけないくらい広い海岸でしたが、いまは海の家のすぐ目の前に波打ち際があるように感じます。砂浜も砂利浜になっています。これは天竜川のダムの影響や御前崎港による海流の遮断など様々な原因が推測されていますが、詳細は分かっていません。天候が荒れると浜がけやクリークができたこともあるのです。牧之原市の美しい海を私たちはこれからも守っていかなければいけませんので、まず何が起こっているのかを知らなければいけないと考えています。
福代 土砂の対流を観測し管理予測するシステムは海外でも必要としている国が多数あると聞きます。ドローンを利用し観測を重ねることでデータを積み上げ、海岸周辺の砂の移動のメカニズム分析の足がかりとなれば、海外へのアプローチも可能です。
また、この綺麗な海岸線の維持管理にドローンを活用することで、地元の子供達や住民にも関心を深めてもらい、世界に誇るサーフィンの聖地である静波海岸を市民と一緒に守っていく体制を作ることができると考えます。
写真:雄大な茶畑
| 渡邉 広大な茶畑とドローン 新たなステップに期待しています
杉本市長 牧之原市には美しい茶畑が2153ha広がっています。スカイマティクスのスマート農業のコンセプトと合うモデルを考えることができます。今の時期は丁度お茶の葉の収穫時期ですが、茶畑では摘採時期を一芯何葉と数えて毎日茶畑を周り収穫時期を確かめます。このような作業はドローンを使うと簡単に終わることでしょう。またお茶は尺取り虫やナガチャコガネ、アカダニなどの害虫がつくことがありますが、畑の全面に発生するわけではありません。より初期の段階で発生している箇所のみ薬剤を散布するということができれば、減薬になりコストダウンにもなりかつ、減農薬にもつながります。牧之原のお茶は上質で美味しい、町の特産品です。輸出に当たって減農薬を実現した安全で美味しいお茶としてブランディングを行うことが期待され、今すぐにでも、まず試験圃場から導入試験を始めたいと考えています。
渡邉 ありがとうございます。以前、果樹園を2,3回ドローンから撮影をしただけですが、葉色や葉の量から収穫時期や収穫量の予測ができるのではないかと、期待を寄せて頂いたことがあります。ドローン活用について、私たちが感じるよりももっと身近に欲している環境がたくさんあるのではないか。整備など段取りに時間を取る前に、まずはフライトをしたことで新たなニーズを頂くことを体感しました。杉本市長がおっしゃるようにすぐに動くことが大切だと感じます。牧之原市の豊かな地盤とマキノハラボ、スカイマティクスでドローンを活用した新しいステップを共に進めることが楽しみです。
本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
写真:ドローンで撮影した画像から作った旧片浜小学校の3次元モデル
静岡県 牧之原市 市長 杉本 基久雄
『絆と元気が創る 幸せあふれみんなが集うNEXTまきのはら』広大な牧ノ原台地の大茶園、東に駿河湾を望む自然豊かで温暖な牧之原市。サーフィンなどマリンスポーツの聖地としても有名な静波海岸を有している。
株式会社マキノハラボ 代表取締役 福代 孝良
「新たな教育・人づくり」の拠点施設、旧片浜小運営事業者。自立した地域経営を支える自立した事業者や市民の育成、教育に地域一帯となって取り組み、片浜から牧之原市、そして静岡、日本の中心的な先導的なまちづくり、人づくりのモデルを生み出す。